「夢物語解析」
'02.5.5(1)'02.5.5(2)'02.6.5'02.8.25'02.12.2'03.9.20'03.11.7'03.12.27'04.1.16


 これはまだ孫悟空がチビだった頃の話.

 今日は武天老師がかつての教え子悟空とクリリンを連れて街にやってきた.この一行,傍目に見れば金持ち老人と子供が二人.かっこうのカモである.早速一般人Aが武天老師に襲いかかる.
 今後永きにわたってドラゴンボールの中核を担う悟空とクリリンはもちろん,戦闘能力たったの139の亀仙人でさえ,指折り数えるほどの数値しかない一般人は敵ではなかった.
「じっちゃん.こいつどううする?」
 しかしもちろん捕らえたのは弟子の二人である.
「バカなやつだな.あろうことか武天老師さまに手を出すなんて」
「ふむ.そうじゃな…」
 痩せた老人はサングラスに空を映した.


 悪党A'が連れてこられたのは,大きな滝の下,滝壺の,まるで太公望が座っていそうな岩の上だった.
「悟空よ.アレをやってみなさい」
「はいっ」
 少年孫悟空は両手を空に上げ,歯を食いしばって力んだ.
「ぐぎぎぎぎぎぃ…!」
 悟空から放たれるただならぬ空気が周囲を揺るがす.
 すると滝で波打つ滝壺に変化が起きた.突然渦を巻き始め,無形の水が何らかの作用によって形作られていく.水の中で,水色の何かが蠢いているのだ.水面の所々が生物的なラインに,「背」の形に盛り上がる.
「ぎぎぎぎぎー!!!」
 ザバァ!!
 悟空が重いものを持ち上げるようにゆっくり身体を伸ばすと,水中から水の竜が姿を現した.
「でやああぁー!!!」
 気合い一発.悟空は両手を天に向けたまま,あぐらをかいて空中浮遊.背後には荒々しく巨大な竜がとぐろを巻く.
「ぷハァ!」
 バシャァ!!
 悟空が力尽きて地面にへたり込む.
「ふむ.雑ではあるが力強い竜じゃった.ほれクリリン,お前もじゃ」
「え,私もですか?はい,わかりました」
「ぐぎぎぎぎ…!」
 クリリンも悟空と同じように両手を挙げる.水中がかき回され,水面が蠢き,
「でやあああー!!!」
 気合いとともにクリリンが伸びる.
 ザバァ!!
 精巧な氷細工のような竜が,水上に弧を描く.
 ザシャァ!!
 竜は体の半分ほどを空中に見せると,そのまま水中に潜ってしまい,残りはクリリンが力尽きて雨となった.
「ハァ…!ハァ…!あれ…?」
 悟空のように水竜の全体を浮かせることはできなかった.
「ふむふむ.気にすることは無いぞクリリン.悟空ほどのパワーはなかったが,気の使い方はお前の方が上じゃった」
 悪党A'は飛び出た目玉でグラサンを割ってしまっていた.半ば放心状態である.
「どうじゃ.これが『気』じゃ」
 華奢な老人が背を向けたまま悪党に語る.


 恐らく,移動の間に精神と時の部屋に入ったのだろう.悟空とクリリンはすっかり大きくなって強くなっていた.その実力は武天老師を一般人化する程であった.
 四人はとあるカプセルハウスの一つに入った.
「老師さま.こいつどうするおつもりですか?」
 クリリンは遥かに弱くなった師を今でも武天老師と呼称していた.
「うむ.お前達はそこで待っておれ」
 武天老師はそういうと,成人した二人を残して悪党A'と共に別室に入っていった.
 怯える悪党A'の前で武天老師はハットを取り,スーツを脱ぎだした.
「どうじゃ?ワシ,セクシーじゃろ?」
 亀仙人の体は骨と皮だけの老体であった.
「ひっ…ひぃっ…!」
 悪党A'はひたすら首をタテに振る.
「しかし,この身体は長年培ってきた強靱な肉体を入れておく器にすぎん.フォォォォ…」
 亀仙人は深く息を吸い込む.
「フンッ!!」
 ボンッ!!
 骨と皮だけの体が,突然膨れあがる.パンプアップした亀仙人は,人間には及びもしない域の肉体を纏っていた.
「か〜め〜」
「は〜め〜」
「波――!」
 音がわからないくらい大きな音を立てて,眩い光とともに家の屋根が消し飛んだ.
「じっちゃん!」
「老師さま!」
 かつての弟子達が部屋に飛び込んでくる.
「よいか.よく聞くのじゃよ.こ れ が 『気』 じゃ」
「じっちゃん!じっちゃん!」
「老師さま!老師さま!」
 悪党は気絶して漏らしてしまった.

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 恐らく僕は,亀仙人のカッコ良さと,師弟間の忠義溢れる世界を見たかったのではないかと思う.
 見た夢はかなり短く,断片的なので,かなり脚色を施した.そのせいで実際よく憶えている箇所も少し違うように書かざるを得なくなった.
 例えば,クリリンの水竜は水面に背を出すくらいでほとんど出てこない.「あれ?」って感じで少しコミカルだったんだが.そのあとに亀仙人が「じゃがクリリンの方が気の使い方が巧い…」などと言うものだから,少なからず竜を見せなければそういうコメントを導けなかった(他にシナリオが無かったわけではないが).
 また,AもしくはA'の悪党という設定も,元は曖昧で,天下一武道大会で負けた人か,もしかしたら弟子志願者だったかもしれない.とにかく,悪者である人ではなかった気がする.
 本来は亀仙人のカッコよさげな「武天老師語録」がもっとたくさんあった気がするが,忘れた.
 これを書いていて,ドラゴンボールに関して様々な考察が巡ったので,もしかしたら書懐に書くかもしれない.