「試作」
彼に与えられた死に場所は、
病院のベッドでもなければ、
タタミの上でもなかった。
誰も居ない、ただ荒涼とした赤褐色の砂漠だった。
その眼に映るのは、
赤い大地に 青い夕暮れ。
かすかに感じられるのは
ホームの波長。
彼は、
異郷の絶景に心動かされることなく、
恐れも悔やみも なかった。
ただ、死を待つことだけが 残った。
砂嵐は全てをふさぐ。
動かすことのできた身体も
今はもう、
何を言われても動けなくなった。
4つある 感覚器官も
働けなくなって いく
足は 砂に埋もれ、
眼は 既に傷つき、
なにも見れなくなっていた。
そして映すのは
砂砂砂…
見取ってくれる 仲間も
知らず、
彼は 赤い大地に呑み込まれていった。