「サイエンス・サーガU」(3/24)
T U( 参)
やっとこさ終わらせた。かなり無理矢理。


参、
「ほう!不老不死の妙薬をか…!」
 大きく壮麗な盆に乗せられた黒い塊からは!光が漏れるように随所から金色が覗いている!
 ポチョムキンはサングラスを吊り上げ、わざとらしく感嘆の声を上げた。今まで!他の課題とは一線を画し!このお題だけが抜きん出て審査願いが少なかった!そしてことごとく胡散臭い代物ばかりだった!
「はい!龍涎香と呼ばれるたいへん貴重な香でございます!古代シナを始め、各地で不老長寿の薬とされ重宝されました!時には同量の金以上の価値が付いたこともあったとされています!」
 キチっとした身なりの男はどうやら弁護士のようだ!なんでもとある資産家が享楽のためこの催しに参加したとか!
「胡散臭さ爆発ですな!」
 ガディフールがポチョムキンに耳打ちする!
「エンノタッパ様は!地元の漁師をして!三月の歳月をかけこの龍涎香を手にされたわけです!」
「漁師!?これは海で取れるものか!?」
「はい!選りすぐりの漁師が3ヶ月かけて必死で働いた産物でございます!マッコウクジラを追い求め遠洋に出た彼らは!荒波の中クジラを狩ること百数十匹!ついに一匹の老いたオスの腹から!この妙薬を取り出したのであります!この間には語り尽くせないほどの数々のエピソードがあり…!」
「それは…!」
 ガディフールが口を挟もうとしたが!暇を与えず弁護士はまくし立てた!
「私の知るところによると!この龍涎香を持つクジラは!ただでさえ少ないマッコウクジラの中でも1%に満たない出現率とか!それもオスに限ると言われています!そのクジラに辿り着くまで!漁夫が戦ったクジラの中には!白鯨のような老練な個体もいたとか!命を落とした勇猛なる漁夫は幾数人…!そんな数々の死闘を繰り広げた彼らの血と汗の結晶が!この一塊の香であります!それを!エンノタッパ様を始め!漁夫の皆さんはぜひ王家にと!ご寄進なさったのであります!私めは一介の弁護士にございませんが!何卒!彼らの死と努力が報われる褒賞をと…!」
「ああ!ああ!わかった!わかった!そのようにはからうよう努める!」
 ポチョムキンは名も出ぬ弁護士の懇願をめんどくさそうに受け流した!そして振り返り後ろの部下に命じる!
「おい!こいつらは国際自然保護条約にわが国を違反させよう謀った逆賊だ!そして国定自然保護条例第7条にも違反した犯罪者である!WWFと文化庁に通知後!関係者の親族親類使用人まで全て牢獄にぶち込め!!それから!動物愛護団体にエンノタッパの宮殿・別荘等を砲撃するよう働きかけろ!」
「ハッ!!」
 赤い夕陽が映る部下らの瞳は!キラキラと輝いていた!
「これで牢屋の人口密度はサウナを越えたな…!」
 夕陽を眺めてポチョムキンと並ぶガディフールは!ポツリとつぶやいた!この国の人々は無類のサウナ好きで!午睡後の夕刻ともなれば!市内のサウナ場はすし詰めの大盛況となるのだった!


「王子!王子!王子!王子?王子ー!」
「なんだ貴様!!?我はダ=カラティナの王位継承者ヘンディアス王子なるぞ!!連呼する嫌味か!!?愚弄するならタダではすまんぞ!!」
「私でございますよ!王子!」
「誰だお前!!?黒服・グラサンなぞ!!ここには山ほどおるしな!!」
「そんな…!私です!ポチョムキンです!三ヶ月前までずっと王子の側に仕えてきたではありませんか!」
「ン!!ああ!!そんなヤツもいたな!!今のバランテークがなかなか気の利く男でな!!お前のことなんかすっかり忘れていたよ!!」
「だ!誰です!?バランテークって!?」
「黙れ!!貴様今まで三ヶ月も仕事を放ってどこで何してた!!?」
「ですから!私は王子の提案なされた3つの課題の審査を請け負っていたんです!」
「課題!!?提案!!?何のことだ!!?」
「そんな…!お父上にご意見なさったではありませんか!書簡で!」
「ああ…!!あれか!!アッハッハ!!あれはもうよい!!とっくに飽きたからな!!」
「そんな…!で!ですが!結果だけでもお聞き入れください!お願いします!」
「ム…!!我も忙しい身なのだが!!そこまで言われて聞く耳持たぬほど狭量ではないわ!!申してみろ!!」
「はい!では出題された3つの課題のうち!
永久機関について!
 門前払い132名!審査不合格者315名!合格者0!関連する逮捕者3671名!
練金術について!
 門前払い95名!審査不合格者273名!合格者0!関連する逮捕者2439名!
不老不死について!
 門前払い110名!審査不合格者25名!合格者0!関連する逮捕者1378名!
これが1000枚を越える詳細です!逮捕者は重複を考慮しても総勢7473名に上りました!そのため地下牢が限界です!」
「よかったじゃないか!!悪党がたくさん捕まって!!」
「ハイ!流石でござます!王子!悪人を炙り出すためにこのような策を講じたわけですね!?ですが地下牢が限界です!」
「ン!!?ヌワッハッハ!!まあな!!牢が足りないなら囚人をさっさと処刑するんだな!!ここは保護指定建造物だから勝手に増築したりしてはいけなからな!!」
「ハッ!かしこまりました!」
「よし!!今日は気分がいい!!ポチョムキン!!お前また前の公務に戻ってもよいぞ!!」
「エッ!ホントですか!?」
「ハッ!!ハッ!!ハッ!!バランテークと仲良くな!!」
「エッ!ヤツも一緒ですか!?」
「なかなか気の利く男でな…!!」
「そんな…!」

    /完遂