「pardon,mademoiselle」

 脇を通れば
 振り向かない人はいない
 社交の場で、一際注目を浴びる
 彼女が近づいてくる

 絨毯敷きのホールで
 足音を高らかに奏でる
 あの麗人が 
 前で止まる

 ―ねぇ―
 ……

 ―pardon,mademoiselle
 私には妻がおります。

確かに…
 貴女は今たいへん輝いていらっしゃる
 貴女の輝きにくらべれば
 我が妻のそれは 映奪されて暗くさえ見える。

 あなたの光はまさに太陽のよう
 万物を隅々まで照らし抜く烈日の輝き
 その眩しさは万人の目をくらますのです
 でもね、太陽は限られた時間しか
 空には居れないのですよ
 夜にもなれば貴女は 地平の影に隠れるでしょう

 我が妻の光はそれ灯台のともし火
 常に活路を標すべく
 千古の沈黙を保ち 光っているのです
 知っていますか?
 灯台の灯は昼間にも千里の先を照らしているのですよ
 貴女には見えないかもしれませんが
 彼女を見る人は皆頼っています
私に路を標すべく
 謙虚に、そして永永と光を放っているのです