「大事なもの」

 希望のエモノは
  立ちはだかった
   私の身体を避け通り
  グッと抱えた
   腕(かいな)の下をくぐりぬけ
  ギュッと掴んだ
   指の間をすり抜ける
  必死で止める私を後に
  煙のように過ぎ去って
  私のエモノは行ってしまった。

 ふと気づく 服の内
  エモノの忘れ形見。
 知らず知らずに入ってた
 私と服の
  隙間の煙。
 肌身を取り巻く
  私の得モノ。
 皮膚に染み入る
  私の一部。
 私をつくる
  大切なもの