「サイエンス・サーガ」(6/25)
科学モノ?ギャグにはいるのかなあ?ライトノベルではあるんですが。
これはスラスラ書けた。楕円の大きさを求めるのに少し手間取ったが(本当は高さ200メートルでした)、大体3時間くらいかな。
もしかしたら続編があるかも。
T U( )


「ヌワッハッハッハ!市井の諸君!今日も心を亡くして仕事に勤しんでいるかーい!?」
 王子は今日も城のテラスで拡声器を執る!
「我が名はヘンディアス・グラエラ・サラティーヌ・カロ3世!諸君らの血税は!国を執る我らが為に集められ!そして!贅を尽くした宴に異族のブタどもを呼びつけることで!我らヌバ民族の品位はより高まっていく!だから!諸君らの知と汗の結晶は!我らが私腹に消えるのではなく!ヌバの栄耀と誇耀に満ちた未来に収束されるのであり!然るして!諸君らは…」
「王子!王子!そろそろお引きくださいませ!グラディス王が執務に入られます!」
 ベンディアス王子の後ろから!おずおずと歩みよる黒ずくめの男!
「わかっておる!ポチョムキン!」
 王子は拡声器でそう怒鳴ってから!ポチョムキンと呼ばれた短髪グラサンの男にそれを手渡した!
「左様ですか!それでは王子!一先ずお着替えください!」
「今から向かう!」
 王子はスタスタとテラスを後にし!衣装室に向かった!
 ポチョムキンもすかさず後について歩く!
「王子の今日のご予定ですが!変更がございます!王子のご希望通り午前11時まで時間を空けることができました!以後は通常通り11時より35分まで近代列国の政治と経済!それより12時まで…」
「もうよい!頭に入っておる!それより昨日のアレは出来ているのであろうな!?」
「はい!もちろんでございます!発注どおりに仕上がっております!的もお好みのものをご用意致しました!」
「よし!着替えたら早速実行だ!これも我らの栄・誇の為!抜かるなよ!」
「はっ!」
 王子は壮厳な衣装室の扉の奥に消え!ポチョムキンは部屋の前で直立して王子を待つ!
 中では王子がこれまたド派手な服に袖を通している!
 ちなみに!このサーガ(武勇伝)で句読点が全てエクスクラメション!マークなのは!王子を
「読むのではない!感じるんだ!我が熱いハートを!諸君らの凡庸で凍りついた心を煮えたぎらせるこのオーラを!」
「王子!お召し替えの最中に叫ばないで下さい!」
 女中の老婆が王子を諌める!

 今日の空き時間は王子たっての希望を叶えるために設けられた!
 ベンディアス王子のたっての希望!それは!
「ゴルゴ13のような射撃の名手をやりたい!!狙うは500メートル先の脳天!それに我が百発百中で撃ち込める装置を造れ!明日までにな!費用は問わん!」
 というもの!これには!「王子!それは無理です!」「この時代にはすこぶる命中精度の悪い!滑腔式マスケット銃(螺旋溝がない銃)しかありません!」「それ以上進んだ銃は設定にありませんよ!」という周りの反対もあったが!王子たっての希望ということもあって!なんとか取り付けた事業であった。

 そして一行は城の裏に広がる草原にやってきた!その中にどっしりと寝そべるモノがある!
「おお!あれか!かなりでかい建造物だな!流石の我も少しばかり驚くぞ!」
 銀色に輝く滑らかなボディ!見る者を圧倒する大スケールの楕円体!
「はい!全長540メートル!高さ奥行きそれぞれ100メートルもある巨大な楕円!その名もゴルァルゴ13です!王子にはあの中に入って!このレーザービームを使って的を撃って頂きます!」
 ポチョムキンの説明が始まると!王子の前にハイなテクノロジィで白色がかった銃が差し出された!
「ウム!あるではないか!こんな銃が!」
「それでは近くに行って説明を続けます!」
 一行は輝く瓜のすぐ下までやってきた!
 巨大装置は!その形のせいか下部を堅牢な土台にしっかり固定されていた!
「よし!では乗り込むぞ!」
 王子は勇み足で備え付けのステップを登る!
「王子!お待ちください!まだ説明は終わっておりません!」
「数学的なカラクリなどよい!」
「そういうことにもいきません!これも王子のためです!なによりこのサーガ(武勇伝)が破錠してしまいます!」
「うーむ!」
 王子はしぶしぶ降りて来た!
「では改めて!先ずこのゴルァルゴ13の構造ですが!楕円体となっており!内装は全て曲面鏡でなっております!これにより!内部のある一点から放たれたレーザービームは全てもう一方のある点に向います!これは楕円の性質によるもので!その点より放ったビームは!どこに向って撃とうとも必ず的の頭にヒットするのです!」

「おう!すごいではないか!後ろに撃っても当たるのだな!?」
「はい!そしてビーム反射の際に発生する熱の対策の為に!外装には水冷装置が備わっております!」
「ふむ!」
「王子は中に入り!仮設の階段を登って高さ50メートル中心から250メートルのポイントまで行って頂きます!そしてそこで銃を構えて撃っていただきます!尚!仮設の階段はその際取り外され!入り口も閉じられます!照明はありませんので内部は真っ暗になると思われます!」
「的が見えぬではないか!」
「それでは的には目印の灯りを付けましょう!そして王子はおもむろに銃をセットし!あらぬ方向めがけて撃てばよろしいのです!」
「よしわかった!簡単だ!銃を渡せ!今すぐ始めるぞ!」
 銃をとり!ステップを登る王子!
「いや!その前に!的はどうなった!?ポチョムキン!上手いのが見つかったか!?」
「はい!それはもう!粋のいい泥棒娘をご用意致しました!」
 男なぞ撃っても見苦しいだけだ!というのが王子の見解だ!
「ヌァッハッハッハ!よろしい!よく見つけた!獲物と話はできるか!?」
「仰せとあらば可能です!女の方はすでに所定のポイントに取り付けてありますので!」
「よしわかった!」
 王子はそう言って!銀色の瓜の内部に入っていった!
 中は入り口から入る光が全体を満たして!意外なほど明るかった!
「ハッハッハ!お前が今日の獲物か!名はなんと言う!?」
 王子は長い階段を上りながら!遠くに浮かぶ人らしきものに向って叫んだ!
 なにせ500メートルも離れているのである!相手の容貌はもちろん!面影さえも判別できない!ただ!小さな赤い光が人間の頭付近で光っている!おそらくそれがポチョムキンの言っていた目印だろう!
「黙れ狂人!お前に名乗る名前なんて持ってない!」
「ハッハッハ!威勢がいいな女!あと十分もすればお前の口は頭ごと吹き飛ぶのだ!今のうちにわめいておけ!」
「誰がお前らなんかに従うか!民の心はもう王家にない!滅ぶのはそっちだ!クズ!」
 2人の声は巨大な空洞内を激しく木霊する!

「ポチョムキン!いいぞ!下げろ!」
 王子は入り口から覗く彼の頭に向って叫んだ!
 階段は次々と降ろされ!王子は地上50メートルの足場に孤立した!
 そして扉が閉められ!中は本当の暗闇になる!
 はずだった!
「おっ!?なんだこの赤い光は!?」
 扉が閉まったとたん!内部は赤い光で満たされた!
「おそらく目標の赤い光が内部で反射しているのでしょう!問題はありません!王子は特に光の強い部分をめがけて撃てばいいのです!」
 ポチョムキンの声が耳元に付けた装置から聴こえてくる!王子の声は手すりに付けられた小型集音器であつめられ!外と連絡が取れている!
「どこも同じ強さに見えるが!!まあいい!どこに撃っても当たるのであれば然したる問題ではない!ヌバを謗る逆賊め!死ね!」
 王子はおもむろにトリガーを引いた!
 辺りに閃光が広がり…!
「な!なんだ!」
 閃光が飛び交い!…いつになっても閃光が収まらない!娘の頭を貫いた様子もない!
「これは!どういうことだ!ポチョムキン!」
 王子は外の世話係に連絡をつける!
「どうなさいました!?ベンディアス王子!」
「よくわからんが!辺りがひどく眩しいぞ!それに暑い!」
 王子は!もはや閃光とも呼べない!強烈な光で周りを包まれていた!
「アハハハッ!」
「何がおかしい!女!」
 目も眩む光の向こうから!娘の高笑いが聞こえてくる!
「あんたらやっぱりバカだ!って言ってんのよ!」
「なぜ当たらなかった!100パーセントの精度でと言いつけたはずなのに!」
「あんたのその熱線みたいなのは!私の髪を焦がしていっただけさ!わからないかい!?今あんたが撃った銃の先がちゃんとした点からズレてたんだよ!この気味悪い建物は相当精密に造られているようだけど!それなら尚更!その点から数センチズレただけでも当たんないだろうね!」
「それは本当か!?ポチョムキン!」
 王子は手すりのマイクに向って怒鳴った!
「え!?何がでしょうか!?王子!」
 ポチョムキンまで娘の声は届いていない!
「今私達の周りには!その熱線が飛び交ってるのさ!どっちかに当たるまでね!」
「ヌウ!おのれぇ!」
 王子は手すりを叩きつけた!
「王子大変です!冷却水の温度が急上昇しております!このままでは装置が壊れる恐れがあります!いかがしますか!?」
「もういい!これは中止だ!入り口を開けろ!中止だ!階段をよこせ!」
 そのとき!
バーン!と大音が響き渡り!やわらかい青空と共にガラス片と冷却水が天井から降り注いだ!
「アハハハ!死んじゃえー!」
「我がこんなカラクリ仕掛けにやられるかー!」

 この事故による死者負傷者は不思議にも出なかったが!女泥棒は正規の方法で処刑され!ベンディアス王子もグラディス王からきつくお叱りを得たのであった!もちろん!この事件は表に取り立たされることなく!闇に消された!